ドル円は上昇傾向?米政策金利を巡って相場と金融当局の思惑にズレが発生
概要
ドル円は米経済指標の結果が出るたびに右往左往している状態だ。3月と4月のファンダメンタルは大きく変化している。ドル円は高値が抑えられ、安値も固まってきている。大きな視点でトライングルやフィボナッチリトレースメントを活用して今後の相場を見極める。
ファンダメンタル要因
- 米経済指標に悪化の兆し、米雇用統計は市場予想を上回る
- 利上げによる副作用である米景気悪化に焦点
- 日銀は現行のYCC政策とマイナス金利の継続を示唆
- マーケットと米当局者の思惑にズレが生じている
4月前半に発表された米経済指標に悪化の兆しが見られた。米失業保険件数が予想を上回り、ISM景況感指数が市場予想を下回った。一方、米雇用統計は市場予想を上回り、タイトな米雇用状況が改めて示された。米雇用統計の結果を受けて、5月FOMCでは0.25%の利上げ確率が高まった。
しかし、米景気に確実に高金利政策が影響している状況であり、3月初旬までのファンダメンタルと異なっていることに注意が必要である。米地銀破綻の問題を発端として、高金利政策の副作用が表れ始めている。米地銀の融資額が急減しているというデータも発表されており、景気圧迫している。
3月までは「利上げ継続」というFRBの姿勢がドル高につながり、結果的にドル円は上昇していた。逆に「年内利下げ観測」が報道されると、ドル売りとなって下落する傾向があった。また、マーケットと米金融当局の思惑が「利上げ路線」で一致しており、方向感が分かりやすかった。
しかし、4月になってマーケットは米景気悪化(リセッション)懸念が高まっていることや経済指標が悪化していることを受けて利下げ観測を高めている。一方、米金融当局者はインフレ抑制のため、利上げ路線の継続を重ねて訴えている。
4月の相場では、FRBの「利上げ継続」という姿勢は、米経済指標の悪化を招くという懸念から株安につながる傾向がある。リセッション懸念が高まると、リスク回避の動きが発生しやすくなり、円が買われ、ドル円は下落しやすくなる。3月までの相場と異なることにちゅういしたい。
マーケットとして「年内利下げ」可能性は織り込み済みだが、FRB当局者から聞こえるのは利下げ観測を否定する発言ばかり。マーケットにトレンドが発生していても、当局者がマーケットを否定する発言をすると、一瞬で反転する「トレーダーキラー」の相場となる可能性がある。
テクニカル分析
日足
ドル円の日足チャートを分析する。直近では138円台の240日移動平均線が抵抗帯として機能し、132円まで下落した。注目したいのは安値を更新できず、切り上げの形となっていること。一方、高値は切り下がっており、狭いレンジ内に価格が収束している状況だ。
日銀がYCC政策とマイナス金利政策の継続を示唆したため、短期的には上昇する可能性があるが、中長期的にはレンジ相場内にあると判断する。
130.50~133円付近の狭いレンジ相場で推移しており、今後、上下のどちらかに大きくブレイクアウトする可能性が考えられる。上下のトレンドラインに注目したい。
ドル円/日足
週足
ドル円の週足を分析する。去年の上昇トレンド(102.50~152円)にフィボナッチリトレースメントを描画すると、50%に該当するのが約127.250円となり、週足で反発していることが確認できる。一般的に時間軸が大きくなれば、テクニカル分析の信頼性も高まるとされる。
50%に該当するのは127.250円、38.2%に該当する価格帯は133.10円となり、現在は週足フィボナッチリトレースメントの50%~38.2%の間で推移していることが理解できる。
ドル円/週足
日足と週足分析を総合的に考えた今後数週間の予想レンジおよび支持線・抵抗帯は以下のとおりである。
4月の予想レンジ | 127.65~139.10円 |
抵抗帯 | 136.25円 |
支持帯 | 129.00円 |
節目の価格である133.10円を上抜けると、135円台まで上昇する可能性がある。目先は日足で形成されているトライアングルのブレイクアウトに注目したい。